さかいめのないことがらに ~ 新しきこととなつかしきことの邂逅
風は,よそからその土地にないものをもたらすわざ。土は,その土地にもとからあるもの。動と静。
時に風はよそからの土を運び,その土地の土と混じりあい,新たな土をつくり,その土がまた風にのってよその土地に連れ立つ。
風と土とは邂逅し,一体となって風土をつくる。
風は大気であり,土は地殻として地球そのものを成す。
地域もまた,地球の一部であるとともに,視点を変えれば,地球は地域から「さかいめなく」開かれ,形つくられている。
自己と他者,中心と周辺,聖と俗,東洋と西洋,時間と空間,主観と客観――わたしたちのものの捉え方は,二元論のしきたりをいつしか所与のこととしてきました。
未来は現在に,現在は過去に「さかいめなく」ゆわえられ,集落は地域と世界に「さかいめなく」むすびついています。
未来のあるべき世界を17の目標設定により実現する取組であるSDGsは,その内在的論理として,目標が描く具体的な在り方と実践手法を,各主体の自律的な構想と行動に委ねています。
わたくしたちは,未来のあるべき世界を「なつかしい未来」として構想し,これを実現していくためのひとつの手がかりとして「風と土と~なつかしい未来へのまなざし~」を著し,みなさまとの対話を通じて,具現化していくことが大切なことと考えています。
「風土的特性と人類史の使命とは離して考えることはできぬのである。」
(和辻哲郎「風土」)
この「まなざし」が,わたくしたちにとりまして,時間と空間,地域と地球,そして,みなさまとの邂逅の場となることも望みつつ。